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(写真左から、本広克行上田誠)



公開が迫る映画『曲がれ!スプーン』は、人気劇団ヨーロッパ企画の舞台『冬のユリゲラー』※1が原作。監督・本広克行と、脚本・上田誠(ヨーロッパ企画)が目指す舞台と映画のコラボは、前作『サマータイムマシン・ブルース』※2(2005年)よりもポップでディープな進化を遂げた。



最初に上田君の舞台を映画化した『サマータイム〜』は、ヒットしたとは言い難いんだけど、観た人はみんな「すごくおもしろかった!」とほめてくれたし、いまだに感想を言われる、とてもありがたい作品なんだよね。出演者も、瑛太、上野樹里、真木よう子と、みんな売れていったしね。早く次の企画と思ってはいたんだけど、上田君も売れて忙しくなって、思いのほか2本目までの時間がかかっちゃったね。
『サマータイム〜』のあと、僕ら(ヨーロッパ企画)はなかなか本広監督の心に響く作品がつくれなくて(笑)。再演シリーズでやった『冬の〜』をおもしろがってくださって、それが今回の映画の原作なんですけど。
響かなかったんじゃなくて、舞台作品の構成と映画の構成は違うから、そこの問題だよね。実は最初、僕は違う作品を「いい!」と言ってたんだけど、上田君が『冬の〜』はもともと女の子を主人公に書こうとしてた、と言ったのを聞いて「それで行こう!」と(笑)。でも『曲がれ!スプーン』は、最初からむしろ映像向きの作品だったんですよ。超能力の話だから、手元をアップにできる映像のほうが絶対に効果的。舞台でやったのが不思議なくらいだもん(笑)。ただ、僕は上田君のこと、そこを意識して書き分けができる数少ない作家だと思う。
逆に僕は、映像には不向きの話なんじゃないかと思っていたんです、舞台では小さな喫茶店の中だけの一幕物なので。でも今回、本広監督に映画にしていただいたことで、ズームという語り口を発見させてもらいました。外の世界から始めて、徐々に話の中心地に近づき、ググッと真ん中に寄っていく方法でやればいいんだ、なるほどな、と。そうすれば、たとえ一幕物でも映画的なスケール感や奥行きを出していけるんですね。
企画のスタートの頃、僕はヨーロッパ企画の役者に全員出てもらおうと提案したんですけど……。
それはやっちゃダメですって。僕らからすると、映画は作品をより多くの人に見てもらえる広い窓口になるのも面白味ですから。長澤まさみさんという、知名度も人気もある方がいい意味での触媒になってくださって、ヨーロッパ企画をまったく知らない人が長澤さんに導かれてこの作品の世界に入ってもらえれば、そのほうがうれしい。
確かにそうだと思ってそれは諦めたんだけど、長澤さんを取り囲むエスパー達は、僕の大好きな小劇場で活躍する役者さん達に集まってもらいました。この顔ぶれはある意味、ものすごく贅沢(笑)。名前は知られてないけど、すごく上手い役者さんが小劇場にたくさんいることが、この映画をきっかけに広まっていったらいいと思うんですよ。海外の映画では、観たことがあるけど名前は知らないという人が(作品の鍵を握る)犯人役だったりするからね。
あの人もこの人も主役級というスタームービー自体が特殊な形態なんですね。
そうそう。と考えると『曲がれ!スプーン』は正しい映画だと思う。



原作の舞台では、長澤さん演じる桜井米(よね)は、幕が開いて1時間ぐらい経ったところでようやく登場する役なんです。「この子を話の中心にしよう」と監督がおっしゃった時は驚いたんですけど、登場人物の中で最も一般的な目線を持ってる人を話の中心に持ってくるのは確かにおもしろいと思いましたね。ただ、女の子を主人公に書き直すのは、もともと自分の中にアイディアがあったとはいえ、大変でした。
何度も何度も書き直してもらったよね。こっちの希望が細かかったし、あとから次々と増えていったんで、途中からイラッとさせちゃったんじゃないかと思うよ。
いえいえ。その分、舞台との差が明確になりました。実はこの作品、僕の中では結構、鬼門だったんです。(ストーリーの進め方が)詰め将棋みたいな作品で、なかなかゴールまでたどり着けなかった。ヨーロッパ企画はわりと、失敗したと思う作品でもそのままにせず、手を加えてリベンジするんですね。『冬の〜』は、おおもとになった作品から1年越しにリベンジが成立して、映画化でさらに手がかかった(笑)。舞台版はタイトルを映画と同じ『曲がれ!スプーン』にして、映画の公開とほぼ合うタイミングで4度目の上演をするんですけど「舞台版はこれなんです」というものを見せられればいいなと。
『サマータイム〜』は諸事情でズレてしまったけど、本当は、映画と舞台で同時期に同じ作品を観られることを目指してスタートさせた企画だからね。公開が近いのはすごくうれしい。
今回、映画を経たことで「舞台版はこういうところがソリッドだった」ということが自分ではっきりわかったので、映画と対で観てもらえれば1番いいなと思います。
ぜひ両方観てもらいたいね。「同じ話なのにこんなに違うんだ」って。
チラシなどのパッケージもまったく違いますからね。映画はかなりガーリーですけど、舞台は逆にビターというか……。

ビター(笑)。
超能力者達の集まりという設定ですけど、笑いの取り合いのような、2時間ずっと肉弾戦の芝居ですから(笑)。
確かに超能力を披露し合うシーンは、ヨーロッパ企画のメンバーの本領発揮だよね。
それこそが舞台の醍醐味だったりするんで、超能力の説得力は映画に負けますけど、そのあたりをさらに特化したいです。
いいねぇ(笑)。東京公演は紀伊國屋ホールだよね。初演や今までの再演に比べたら、劇場が格段に大きくなるね。
そこはあんまり心配してないんです。ヒソヒソ声で会話するシーンがあるんですけど、狭い喫茶店で、話を聞かれたくない人がすぐ近くにいるのにヒソヒソって無理がありますよね。映画を観て、(セットの喫茶店のスペースが充分にあって)自然にヒソヒソできるから羨(うらや)ましいなと思ったんですよ(笑)。その点で、紀伊國屋はむしろちょうどいいサイズかもしません。
取材:徳永京子 撮影:平田光二



ヨーロッパ企画
1998年、同志社大学演劇サークル「同志社小劇場」内において上田、諏訪、永野によりユニット結成。2000年に独立。京都を拠点に全国へ舞台作品を発信し続けている。各種イベント、映像、DVD製作、ホームページ企画、雑誌連載、テレビ・ラジオ番組、携帯コンテンツなど、幅広く活動中。11月21日(土)に公開される映画『曲がれ!スプーン』と併せて舞台も上演される。

本広克行(もとひろ かつゆき)
バラエティ番組の演出を経て1992年にドラマ『悪いこと』で監督デビュー。その後、ドラマ『踊る大捜査線』『蘇る金狼』、映画『7月7日、晴れ』『少林少女』など数々のヒット作品を生み出す。『踊る大捜査線 THE MOVIE2』では日本映画(実写)興行収入歴代1位を獲得。近年は映画と演劇のコラボレーションにも力を注いでいる。ROBOT所属。

上田 誠(うえだ まこと)
ヨーロッパ企画の代表。これまでの全公演の脚本・演出を担当している。外部での脚本・演出、映画・ドラマの脚本、テレビ・ラジオの企画構成、ラジオパーソナリティやイベントへの出演など多方面で活躍。2003年以降、OMS戯曲賞にて『冬のユリゲラー』『囲むフォーメーション』『平凡なウェーイ』『Windows5000』がそれぞれ最終候補に。




【映画】『曲がれ!スプーン』11月21日(土)より公開
監督:本広克行 原作・脚本:上田誠
出演:長澤まさみ/三宅弘城/諏訪 雅/中川晴樹/辻 修/
   川島潤哉/岩井秀人/志賀廣太郎 他
『曲がれ!スプーン』公式サイト


  【舞台】ヨーロッパ企画第28回公演『曲がれ!スプーン』
〈東京公演〉12/10(木)〜22(火) 新宿:紀伊國屋ホール
作・演出:上田誠
出演:石田剛太/酒井善史/角田貴志/諏訪雅/土佐和成/
   中川晴樹/永野宗典/西村直子/本多力/山脇唯
ヨーロッパ企画公式サイト
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