

![]() 『僕の時間の深呼吸』より高泉淳子演じる「山田のぼる」/1990年 |
![]() 『ゲゲゲのげ』初演より/1982年 |
![]() 『天使は瞳を閉じて』初演より/1988年 (C)サードステージ |
![]() 『ナツヤスミ語辞典』前回公演より/2003年 撮影:伊東和則 |
この夏、どういう訳か80年代の小劇場演劇の人気作品の再演が目白押しだ。7月に『僕の時間の深呼吸』(作:高泉淳子/’86年初演)が17年ぶりに再演されるのを始め、8月にはなんと『天使は瞳を閉じて』(作:鴻上尚史/’88年初演)、『ゲゲゲのげ〜逢魔が時に揺れるブランコ〜』(作:渡辺えり/’82初演)、『ナツヤスミ語辞典』(作:成井豊/’89年初演)という名作戯曲が、ほぼ同時期に上演されるのだ。これはまさに“80年代小劇場サマーフェスティバル”とでも呼ぶべき現象だ。筆者のようなアラフォー以上の世代にとってはもちろんだが、それよりむしろ、10代、20代といった若い演劇ファンにこそ、このまたとないチャンスを是非とも見逃さないで欲しい!
『僕の時間の深呼吸』は、早稲田大学演劇研究会出身の白井晃や高泉淳子らによって結成された劇団、「遊◎機械/全自動シアター[1983〜2002]」の代表作だ。本作に登場する高泉演じるモジャモジャ頭&黒縁メガネの少年「山田のぼる」はたちまち人気キャラクターとなり、のちに彼を主人公とした作品がつくられたり、テレビの子供番組「ポンキッキーズ」の司会に抜擢されたりした(20代の方にはこちらの印象が強いかもしれない)。「タイム・イズ・オン・マイ・サイド。時間は僕の味方だ。今がどんな時代でも、そう願い続けたい」―――。あれから四半世紀が過ぎたこの現代に現れた山田のぼる少年は、そう自分に言い聞かせる。彼は一体どんな新しい物語を語るのだろうか?
『ゲゲゲのげ〜逢魔が時に揺れるブランコ〜』は、渡辺えり子(現・渡辺えり)が率いた「劇団3〇〇(さんじゅうまる)[1978〜1997]」によって’82年に上演された。いじめられっ子だった自身の経験をもとにして書かれた同作により渡辺は、翌年の岸田國士戯曲賞を受賞した。タイトルにある「ゲゲゲ」とは、もちろん水木しげる原作の人気漫画からの引用で、実際に劇中に鬼太郎を始めとした妖怪たちも登場する。初演時には、わずか100席程度しかない池袋シアターグリーン(当時)に350人もの観客が鮨詰め状態で観劇したという逸話を持つ伝説の舞台だ。
『天使は瞳を閉じて』は、当時最も小劇場ファンを熱狂させたであろう鴻上尚史率いる劇団、「第三舞台[1981〜]」の代表作の一つで、’91年には劇団初の海外公演としてイギリス3都市(ロンドン、エディンバラ、ベルファスト)にて上演、さらに’03年には鴻上自らの手によりミュージカル化もされた。今回は鴻上が’08年に結成した「虚構の劇団」による上演となるが、今年11月に10年ぶりに封印が解かれる「第三舞台」復活公演を目前にして、あえて20代の若い俳優たちと本作をクリエイトする鴻上の真意をしっかり見届けたいところだ。「第三舞台」の中心的俳優・大高洋夫が初演時と同じ役どころで客演するというのも見どころである。
『ナツヤスミ語辞典』は、現在演劇界屈指の動員力を誇る劇団、「演劇集団キャラメルボックス[1985〜]」初期の代表作。高校教師という経歴を持つ座付作家・成井豊ならではの学校を舞台にしたノスタルジックな作品はファンからの人気も高く、これまでに3回(’89年、’91年、’03年)上演されている。しかし、今回は14年ぶりに復活する他劇団とのコラボレーション企画“アナザーフェイス”として上演されるというのが最大のポイントだ。タッグを組むのは今人気急上昇中の若手劇団「柿喰う客」。しかも、演出を同劇団の主宰である中屋敷法仁が手掛けるという。これまでも「惑星ピスタチオ」や「TEAM 発砲・B・ZIN」といったブレイク前夜の若手劇団とタッグを組むこともあったキャラメルボックスだが、演出まで若手に委ねるのは実はかなり異例のこと。メジャー劇団の代表作に挑む、小劇場界の風雲児・中屋敷の手腕に期待したい。
「風に書かれた文学」とも称される演劇という表現は、いつだってその「同時代性」こそが最大の特長だ。どんなにスタンダードな戯曲であっても上演する時代が変われば、作品の持つ意味もまた大きく変わる。そして、それを本当に実感できるのは、その場に居合わせた者だけの特権だ。だからこそ、小劇場が最も熱かった“あの時代”を単に懐かしむのではなく、あの時、綺羅星のごとく誕生し、今なおトップランナーとして走り続ける才能たちの原点かつ最新のメッセージをこの瞬間に体感しておきたい。それはきっと当時の喧騒を知らない若い世代にこそ強烈な何かを遺すに違いない。
最近、「20年後、これを観たことが自慢になる」というキャッチコピーのショウケース公演があったけど、「20年前、これを観た人が自慢してる」不朽の名作を見逃したら、きっと20年先まで後悔すると思う。
(文:郡山幹生/Choice!編集長)

『僕の時間の深呼吸 21世紀の彼方の時間にいる君へ』
■台本・演出:高泉淳子■出演:高泉淳子/新谷真弓/小山萌子/山本光洋/遠藤守哉/湯澤幸一郎/あさひ7オユキ
■日程:【東京公演】7/13(水)〜18(月・祝)
【兵庫公演】8/13(土)・14(日)
■劇場:【東京公演】青山円形劇場
【兵庫公演】兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■チケット料金:5,500円
■上演時間:約120分
■お問い合わせ先:
【東京公演】ジェイ.クリップ 03‐3352-1616
【兵庫公演】芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255
■公式サイト:http://www.j-clip.co.jp/

オフィス3○○『ゲゲゲのげ 〜逢魔が時に揺れるブランコ〜』
■作・演出:渡辺えり■出演:中川晃教/馬渕英俚可/松村武/若松力/土屋良太/広岡由里子/渡辺えり 他
■日程:8/1(月)〜23(火)
■劇場:座・高円寺1
■チケット料金:5,000円
■お問い合わせ先:Little giants 090-8045-2079 (平日11時〜19時)
■公式サイト:http://office300.co.jp/
虚構の劇団『天使は瞳を閉じて』
■作・演出:鴻上尚史■出演:大久保綾乃/大杉さほり/小沢道成/小野川晶/杉浦一輝/高橋奈津季/三上陽永/山風Y介/渡辺芳博 ・ 大高洋夫
■日程:8/2(火)〜21(日)
■劇場:シアターグリーン BIG TREE THEATER
■チケット料金:4,500円 他
■上演時間:120分
■当日券:あり
■お問い合わせ先:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10〜19時)
■公式サイト:http://www.thirdstage.com/

キャラメルボックス・アナザーフェイス『ナツヤスミ語辞典』
■脚本:成井豊(キャラメルボックス)■演出:中屋敷法仁(柿喰う客)
■出演:多田直人/渡邊安理/井上麻美子/鍛治本大樹/林貴子/原田樹里(以上、キャラメルボックス)/七味まゆ味/コロ/深谷由梨香/村上誠基/永島敬三/大村わたる(以上、柿喰う客)/熊川ふみ(範宙遊泳)/川田希/森下亮(クロムモリブデン)
■日程:8/3(水)〜11(木)
■劇場:新国立劇場 小劇場
■チケット料金:4,800円 他
■当日券:あり
■上演時間:105分(予定)
■お問い合わせ先:キャラメルボックス 03-5342-0220
■公式サイト:http://www.caramelbox.com/












