こまつ座 『父と暮せば』 8/17(水)〜

「むずかしいことをやさしく……」を実践
井上ひさしの戯曲は、井上が存命中からずっと、特別な存在だった。あまりにも有名な「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをおもしろく ゆかいなことをまじめに書くこと」という書き手としての姿勢が、せりふの一言一句に反映されていることを、多くの観客、俳優、演出家が、実感として知っていたのだ。その上、年齢を重ねても衰えない創作意欲によって、多くの傑作が産み落とされたから、新作も旧作もよく上演された。晩年には、同世代でありながら長く交流する機会のなかった蜷川幸雄が演出を手がけ、それまで井上の名前しか知らなかった若い観客とも出会った。不安定な社会の試金石になる戯曲
だが、井上戯曲の真価が明らかになるのは、間違いなくこれから。来年1月には長塚圭史が『十一ぴきのネコ』を演出するが、今後はますます多くの演出家が──そこにはきっと20代も含まれていくだろう──、井上戯曲を新たな視点で捉え直すはずだ。そこには、ここ数年、小劇場の演出家が同時多発的に三好十郎を採り上げたのと近い感覚が、そこに働く気がしてならない。つまり、社会への問題提議が芯に置かれ、劇の言葉から日本と日本人を問う骨太な戯曲は、成長期も安定期も過ぎ去り、大きく揺れる今の日本を考える試金石となるのだ。政治的な姿勢から遠く離れ、メッセージは観客に解釈してもらうことがデフォルトで、繊細な気分を描写することに熱心な今日の戯曲には果たせない役割が、そこにはある。現実的には著作権の問題があり、誰でも自由に扱えるわけではないが、さまざまな演出家によって再読され、上演されることを願う。今こそ、スタンダードな演出で観る
そしてそうなった時、特に人気を集めそうなのが『父と暮せば』だ。映画にもなった本作は、原爆、戦争によって深い痛手を負った娘と、彼女を見守る父の物語で、井上の代表作のひとつ。前述の長塚は、イギリス留学中、現地の俳優と最初におこなったワークショップのテキストにこの作品を選んだという。目的は、生活様式から来る日本人の人との距離感を知ってもらうためだったと聞いた時、井上戯曲はそんなふうにも使えるのかと驚いた。これから上演されるさまざまな『父と暮せば』に備え、スタンダードと言うべき鵜山仁演出のこまつ座バージョンを観ておくのは、きっと有意義だ。 ■作:井上ひさし■演出:鵜山仁
■出演:辻萬長/栗田桃子
■日程:8/17(水)〜24(水)
■劇場:紀伊國屋サザンシアター
■チケット料金:一般 4,200円/学生割引 3,150円
■当日券:あり
■上演時間:約80分
■お問い合わせ先:03-3862-5941
■公式サイト:http://www.komatsuza.co.jp/
遊園地再生事業団『トータル・リビング 1986-2011 リーディング公演』 8/14(日)〜

『ジャパニーズ・スリーピング/世界でいちばん眠い場所』(2010年)
撮影:引地信彦
■出演:上村聡/牛尾千聖/大場みなみ/上村梓/川口聡/今野裕一郎/時田光洋/橋本和加子/矢沢誠/永井秀樹
■日程:8/14(日)〜15(月)
■劇場:森下スタジオ スタジオC
■チケット料金:1,500円 他
■当日券:あり
■お問い合わせ先:ticket@u-ench.com
■公式サイト:http://www.u-ench.com/
in→dependent theatre PRODUCE
INDEPENDENT 2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR
『最強の一人芝居フェスティバル』 8/4(木)〜

■日程:東京公演 8/4(木)〜7(日) ※以降、仙台、福岡、札幌、三重、沖縄公演あり
■劇場:こまばアゴラ劇場
■チケット料金:2,800円(1日通し券・1ドリンク付) 他
■当日券:あり
■上演時間:1作品30分を2〜4本連続で上演
■お問い合わせ先:インディペンデントシアター 06-6635-1777
■公式サイト:http://west-power.co.jp/theatre/
※詳しい当日券の状況は直接主催者へお問い合わせください。上演時間は変更になる場合がございます。
